駄文集


事故自己事後(仮)

 

事故があった
それは誰もが目を覆うような悲惨で残酷な出来事だった
重軽傷者、生存者共になく
死者のみが数十という日が高く上がっている時の大惨事
その亡くなった命は全てが早過ぎる終わりであり、誰もが何もできなかった
否、何をしても防げなかった
それこそ悪魔なる存在の意思であるかのような出来事
この事故は勿論大々的に世界中で特ダネとしてトップを飾り、現実の無情さを知らしめた
事故に捕らわれ前に進めない人もいれば、逆に糧にして世界の技術を高めようとする人もいる
そうして、この世界はまた一歩成長した
だが、そんな話は屍となってしまった被害者達(私達)には関係のないこと
死後の世界へと突然誘われた数十名に関わりのあることはこれからのお話
つまりは死後の世界の御伽噺である
 
どうして私はここに居るのだろう
白い壁が三つと布の付いた窓のある壁に囲まれた簡素な部屋
そして中心には、自分は死に関係ないと主張するかのように純白なベッド
病院は死に満ち溢れている所なのに、でも確かにベッドには何の罪もないと思う
延命も病死も、寿命死さえベッドには関係のないこと
ベッドはそこにあるだけだから
私達を安心というシーツで包むだけだから
しかし、壁には罪がある
病的までに白い壁には生気を吸い取られるようで、少しずつ私も壁のように真っ白に、死に近づいている気にさせられる
それが病院
大きな墓地
ただ、中に埋もれているのはまだ生きている人々だから、生き埋め用の埋葬場と言えるかもしれない
そんな私の部屋には出口が二つある
一つは埋葬場内へと続く扉
もう一つは色のある綺麗な外界へと誘う窓
私がここを出る時には後者を選びたいけれど、それは叶わない夢
誰が決めたのか、窓は人の出入りする物ではないらしいから
だから、彼が入って来たのも窓ではなく扉だった
彼は扉をノックして、奇妙な薄ら笑いと共にこの白い部屋に入った
私の名前を確認するとすぐに自己紹介をし、彼が新聞記者で事故のことを訊きに来たことがわかった「あの事故で生き残った人は少ない上に他の皆さんはまだ集中治療室を出られないようなので、もし宜しければお話を伺えないでしょうか?」
事故のせいで混乱しているかも知れませが覚えている範囲で良いので、と彼は続けた
その後に、今思い付いたかのように片手に持っていた花束を私に差し出す
この部屋に白い壁と黒い雰囲気の男以外に色を持つ存在ができた


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