
駄文集
科学技術の代わりに魔学技術と呼ばれる、火・水・土・闇の四属性を基本とした魔術理論に基づいた技術が発展した世界。
第一次世界大戦の9年前、20世紀初頭の日本海で何度目かの日露戦争が始まる。
日本で三位の規模を誇る武器商人組織『枩本(まつもと)商会』に所属する枩本介次郎(かいじろう)は、日本軍に補給物資と新開発された兵器を届ける。それを海軍大将である東郷平八郎は受け入れ、新兵器『花火玉』と呼ばれる広域殲滅型の兵器を使用する。
その日露戦争から4年の月日が経ち、ロンドン大学に入学し、同時に枩本商会のイングランド支部長に任命された枩本桐栖(きりす)は、自身の補佐であるナターシャと大学の講義を終えた。その後、個性的なマットとマリーと知り合い、彼らを巻き込む事件が発生し、桐栖達はロンドン中を駆け回る。
魔術と武器を扱う走狗達~Running Dogs~
プロローグ
『魔学技術を極めれば魔法に近づく。しかし決して魔法と同列にはなり得ない』
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第一章――商人の日常――
一九〇九年九月三十日(月)午前十時――ロンドン大学(UCL)構内――
ラッセル・スクエアや大英博物館を周囲に置いた位置に、このユニヴァーシティ・コレッジ・オブ・ロンドン(通称UCL)はある。
そしてその校内では、今学年度初日の講義が各部屋で行われている。
しか
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第二章――商業行為(例外)――
十月一日(火)午前十時頃――ロンドン市内の倉庫街、ワッピング・ハイ・ストリート――
この日の講義は全て休まなければいけなくなったので、桐栖は朝早くから、事前に大学から聞いておいた各教授達の自宅へ電話をして、今日は出席できない旨を伝えた。
どの教授も理解のある人物だっ
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第三章――商休止――
10月2日(水)正午前――ロンドン大学校内、講義室――
朝食後、マット達と別れた桐栖達は、大学へと来ていた。
その目的は当然、講義を受ける為である。
言うまでもなく、現在彼らがやるべき仕事は山積みだ。
アーサーからの情報に目を通す、重要な点の確認調査をす
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第四章――商業行為――
10月3日(木)正午――デボン州、エクセタ・シティ駅――
ショーンとナターシャは、軍が用意した迎賓用の車両に約三時間半ほど揺られ、イングランド南西部、デボン州の州都であるエクセタ・シティに到達していた。
「うーん!」
そんな声と共に、ショーンは伸びをする。
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エピローグ
10月18日(金)夕刻――ラッセル・スクエア周辺のカフェ――
「終わりました~!!」
いつものカフェに辿り着くなり、桐栖はそう言ってテーブルに突っ伏した。
ここの店員もこの二週間でマット達の扱いに慣れたらしく、堂々と【パステル色のお客様専用ドリンク】という看板を
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走狗達の序章~The Begining of Running Dogs~
プロローグ――経緯――
一九〇九年十月十七日(木)昼――ノーザンプトン州ウィーリングブラ、ハドン家邸宅――
堅いノックの音が扉の向こうへと消えていく。
「どうぞ」
重厚そうな扉の向こう側から、そんな軽快な声で許可を得ると、ここまで和服に身を包んだ青年を案内していた女中(メイド)が、扉を開いて無言で入室を
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第一章――始まり――
十一月二十八日(木)正午――倫敦市内カムデン・タウン、桐栖の家――
「本日より新しい家族が加わることになった。よろこべっ!」
筋肉だるまが桐栖の家に住む四人(桐栖、ナターシャ、イリア、ショーン)を集め、そんなことを尊大に言いながら、港から連れてきた椙本征爾と真百合兄妹を紹介する。
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第二章――経過――
十一月二十九日(金)正午――倫敦市内カムデン・タウン、桐栖の家――
この日、枩本商会に属する枩本桐栖とナターシャ・グレイズの両名と、ハドン商会をまとめ上げるチャールズ・ハドンは、同じ部屋で調べ物をしていた。
そして部外者ではあるが、桐栖青年の親戚筋にあたる椙本兄妹も、何故か同席してい
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第三章――転機――
十二月一日(日)正午――ウェールズ北部、とある村――
「すいません」
巨躯の男が、村人に声をかける。
その巨体を見て、農作業をしていた中年男性は驚く。
何故なら、その巨体の男は顔まで包帯で巻かれており、明らかにどこかの病院を抜け出してきたような風体だったからだ。
だか
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第四章――結末――
十二月二日(月)午前――カンブリア家邸宅、教会――
この日は、まるでオリバーを天へと導けるように天気も良く、雲一つなかった。
そんな日が彼の葬式となり、マットやポピー、そして祖父母達には良い日と思えた。
しかし、実父であるロバートや叔母のソフィーを含む親族にとって、天気は関係な
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エピローグ――後日談――
十二月六日(金)正午――走狗堂――
「あれ……マットは?」
走狗堂につき、いつもの席に座ろうとする桐栖は、既にいたマリーとイリアに訊ねる。
その隣で、チャールズが「初めまして」と自己紹介をしているが、誰も聞いていない。
マリーはチャールズよりも、一緒に来たナターシャに過剰反
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