
駄文集
短編もどき
短編を目指して書いた代物です。
短編もどき
遡上する訴状
ある日、ある事件についての再捜査が命じられた。
再捜査なんて面倒な命令を出すなんて、正気の沙汰とは思えない。
命令を出すだけが仕事の奴はそれで良いかもしれないが、実際に担当する事になる奴は、大変
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通勤ラッシュ
時は金なり、と昔の人は言ったそうだ。
それは当然、時は貴重なものだという考えがその根底にある。
しかし、その時間が貴重、というのは何にでも当てはまるわけではない。
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蝉の悲鳴
うだるような暑さ。
そんな表現がもはや表現とすら言えないくらい、皆が同じ思いをしている。
けれどもそれはほんとんどの場合において制限された時間内での話だろう。
徒歩移動する間く
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絶望の魔導士
あるところに絶望の魔導士と呼ばれた男がいた。
彼は神に抗おうと研究を重ねていた。
しかしその研究を神は赦さなかった。
それは人間の分をわきまえない、世界を否定
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朽ちる散るチルドレン
誰しも昔は子供だった。
だが、子供時代に感じた事を老いても語る事は難しい。
それは慣れるからだ。
子供の頃は何もが新しく新鮮だ。
知らない事ばかりで、未経験の事象ばかりが周囲を取り巻く。
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暁の最果てへ
日が暮れそうになり、ふと気付く。
本日、僕は呼吸しかしていないと。
歩いてもいないし、起き上がりもしていない。
瞼を開いて天井を眺めていただけだ。
何故?
問いかける。
し
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慣性の集束
起き上がり小法師という物をご存知だろうか?
倒しても倒しても起き上がる、あれのことだ。
けして、無限にポップする雑魚モンスターではない。
そして、その起き上がり小法師は、一度倒すと、ゆらゆらと
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余人(よにん)の会合とその意味
目前に広がる風景は、さしたる異常もなく、一般的で普遍的なものであった。平常時であればオフィスと呼ばれるその部屋は、現状でもそう呼べる、特筆すべきものはなく、デスクと書類棚で造り
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人の一生
僕は笑った。
心の底から泣きながら笑った。
青空の下で木々に囲まれて、咽び泣く様に笑った。
すると、一人の男が通りがかり、僕に訊ねる。
「なにか良い事でもありましたか?」
その問いに、僕は
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不自由な自由
誰にも話せない秘密なんて、他人にとっては無価値な情報に過ぎない場合が多い。
人を殺した。盗みを働いた。誘拐をした。誰それを貶めた。
それらは単なる例ではあるが、一つずつ考察してみると、なるほど
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不在の存在
瞼を開くと、草原が広がっていた。
蒼い空。
心地良い風。
身の丈ほどある草。
そのどれもが安らぎを与えてくれる。
「どう?」
僕の車椅子を押す彼女は問う。
きっと、ここに来て良かっただ
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ハイキング(※少し暗い内容です、ご注意下さい)
川の流れる音を聞き流しながら私たちは進む。しかし、彼とは違い私は山路に慣れていない。時たま彼に抗議の声を上げるが、十数分も経てば彼のペースは元に戻る。休憩を提案しても彼は聞き届
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とある日常(※暗い内容です、ご注意下さい)
今朝も表通りを行き来する車の騒音で目を覚ました。こんな最悪の目覚めはここ三年間、ここに越して来てからずっとだ。
ただでさえ辛い人生が車の所為で安らぎさえも奪って行く。生
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その日に限って雨
夕方から雨が降っている。
ざあざあと、煩くて清々しい旋律を奏でていた。
僕は、雨は嫌いだ。
けれど、雨音はそれなりに好きだった。
心地よい雑音。
大人しく自己主張が強い音。
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