
駄文集
今日の情報屋さん《第二話:情報屋さんの弟子から危険な香り?》
今日も僕は公園で客を待つ。
時間は日曜の昼下がり。
「おっしろおっしろ♪」
近所の子供達が楽しそうに砂場で城を造っている。
その話から少し外れたところにいた、ひときわ大きな子供がこちらに駆けてくる。
「しっしょ~しっしょ~♪ ですます♪」
こいつは僕の弟子だ。弟子々(でしこ)と呼んでいる。
こいつがいない時は静かで良いのだが、いたらいたで暇つぶし程度にはなる。
「なんだ?」
近くに来た弟子々に僕が訊ねると、彼女は「にへへですます♪」と言いながら鞄から機械を取り出す。
「じゃじゃ~んですます! これは『師匠リプレイスメント君5号』なのですますっ!」
またか。僕は頭痛を感じて頭を抑える。
弟子々はなにかとあると僕の存在を機械で代用したがる。
今回の5号もきっと僕の存在意義をなくす機能が搭載されているのだろう。
いや、それは今までのにも搭載されていたのだが。
「これはですますね! 師匠の脳内にある情報を引き出して、師匠の代わりにお客さん達に必要な情報をお伝えしてくれるですますよ~」
ここまでは4号までと差ほど変わらない。
もっとも、3号までは客という概念を完全に失念しているような仕様だったけれど。
「一応訊いておくが、その情報を僕の脳内から引き出す方法は?」
4号までは僕の脳味噌に直接電極をぶっ刺す方法しかなかったので、訊ねておかないと僕の命が危ない。
しかし弟子々は自信ありげにない胸を逸らして返答する。
「それはダイジョーブですます! 今までの試作機と5号ちゃんは違うのですますっ!」
『君』か『ちゃん』なのかは気分で変わるようだ。
「ほう。自信があるみたいだな」
「もちろんですますっ! 今回は切除した脳を機体にセッティングするだけなのですますっ!」
「……」
切除したら代替ではなく、僕がその機械になるってことか?
「却下だ、却下」
「え~、ですます! 正当な理由申し出を求めるですます!」
こいつ、機械にはめっぽう強いんだが、機械以外のことはあらゆる面において赤子にも劣ってしまっているのだ。
常識とか知識とか、機械以外に関わる知識を全部排除してしまっている。
だから僕はどうせ諭しても無駄なことを知りつつも、脳味噌の切除が倫理的に駄目な話しをしてやる。
けれど、1号の時点で同じような話しをしているので、今回それを話して変わるとも思えないが。
「あっ!ししょー、お客さんでありますですますよ!」
ほらな。僕の話しが途中だというのにも関わらず、公園の入り口に立つ常連客を見つけてはしゃぎ始めやがる。
「すいません。期末の範囲を教えて下さい」
しかし僕もプロ。瞬時に顔を情報屋のものへと変えて、応えてやる。
弟子々に関してはまた今度だ。